2009年9月1日Newing 取材・文 眞鍋澄夫 

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newing 丸大鉄工株式会社

代表取締役 長松 孝俊さん

磐田市豊田西之島255-4
(TEL0538-35-1331)
http://www.marudai1.com/

平成元年、長松さんは父の急死によって、屋根材の製造・販売、保守サービスを業とする丸大鉄工の事業を継承することになった。
若干19歳だった。高校卒業を目前に控え、大学進学を目指して受験勉強に明け暮れていら長松さんは、
父からは技術的なノウハウなど仕事のことは何も教わっていなかった。
自ら考え、試してみる以外になかった。何から何まで手探りでのスタート。
しかも、これはつい最近まで変わらなかったと長松さんは言う。

「小さな時から工場が遊び場でしたから、何をどうやっているのかは、おぼろげながら分かってしいました。
でも、それを実際に自分がやることはまったくの別物なんですね。
毎日が試行錯誤の繰り返しでした」と長松さんはこの20年を振り返る。

教わってできるようになったことと、失敗を繰り返しながら自らの工夫でできるようになったことには大きな違いがある。
その最たるものが、一見無駄にも見える回り道で自得した、理解の幅と深さ、問題解決への柔軟性、
そして何よりチャレンジ精神である。独自の製品開発には、何よりもこれらの力がものをいう。
長松さんは、93年にスズキハウス向けの大型生産ラインを完成させたのを手始めに、
98年にシンワハウス向け仕様に対応した製品を開発、01年にはオービス社向けの新仕様も確立した。

ルーフデッキ材には「88型」という一大定番仕様がある。
鋼製屋根材のほとんどがこのタイプで、日本との津々浦々、至る所で使われている。
だがこの製品にも隘路がある。たとえば雨音がうるさいことである。また、住宅用屋根材として味も素っ気もない。
長松さんは、「鉄を使ったダイナミックで繊細な曲線日」をもった新しい屋根材の開発に取りかかった。
静岡大学工学部との共同研究で「最大全長7m幅60cmで継ぎ目なしの長尺材」
「200年(長期優良)住宅基準に対応可(住宅ローン減税最大)」「雨音静音加工で雨音を大幅に減衰」を
技術目標を達成し、軽量・高強度・高断熱材を実現し、「ワンダフルーフ 福瓦」と名付けられた画期的な屋根材の製品化にこぎつけた。
下地が不要で、定番商品となっている88型の部品がすべて仕様可能という利便性もある。カラーも豊富に用意した。
「瓦葺状折板屋根材及びその製造方法」という名称をもったこの製品特許は申請からわずか2カ月後の09年2月に下りた。
長松さんもおどろくほどの短期間だった。通常なら、まず2年はかかる。独創的なものであることが一目で分かったからだろう。

長松さん夫婦の愛犬「福」もイメージ・キャラクターとして参加しているこの製品のPR活動として、8月28日〜8月30日開催の
「グッドデザインエキスポ2009」にも出展し、09年度のグッドデザイン賞の本審査対象にもノミネートされた。

僕はこの文の冒頭に「父からは何も受け継がなかった」というような書き方をした。
長松さんはこれに関して「父の遺言に「鉄に生きる」という言葉あります。
これが父から受け継いだ最大にして最高のものです。私にはこれが「すべて」だと今は思えます」と語った。
後継者が受け継ぐべきものは、技術やノウハウといったものより、その本質をなす「心」であるべきかもしれないと思った。

会社プロフィール
丸大鉄工(株)は昭和37年4月創業、昭和57年4月に法人化した。
屋根材の製造・販売、保守サービスを事業領域として技術を蓄積し、製品を提供している。
2008年5月には県の経営革新支援事業の補助を受けて、住宅機器などの新たな領域での医術開発にも積極果敢に取り組んでいる。
さらに、2009年8月には事業計画における「美しい外観の長尺成型瓦の開発」が全国中小企業団体中央会の
平成21年度ものづくり中小企業開発補助金に採択を受けた。